5. 対策立案
対策を立案する際の考え方として、「多角的・多層的に分析された原因のなかから、実現可能性、即時性、効果性、全体最適性、定着可能性の評価に基づいて何に手を打つべきかを考えるのがよい」ということをこれまでのところで述べてきました。
では、実際の具体的対策はどのように立てていくのかを考えてみたいと思います。
介護現場で行なわれていることのほとんどは、何十年もの間にヒヤリハット体験や実際に起こってしまった事故の経験からその都度考え出された対策的な行動と言えます。
角の丸いテーブルの採用、センサーマットの使用、滑りにくい浴室の床材、注意を促す掲示、繰り返し行なわれる安全研修、介助動作に入る前の利用者への声かけ、誤薬防止のための薬箱の色別や区分けの改善等々、夥しい数の事故防止のための取り組みがなされています。
これらの対策がどのようにして立てられたのかを整理することで、今後、対策を考えていくときにどのように知恵を絞っていけば良いのかが見えてきます。
無意識的に考案したり、窮余の策として出てきたものが様々な良い対策を生み出してはいるのですが、それに依存していると、“時には考えが全然出てこない”、“思いつく人、思いつかない人の差がある”、“良いように思える対策が一側面に偏っている”ことになります
そこで、ポイントを2つ挙げてみます。一つは、要因や原因分析でも行った多角的に考えてみること、そして二つ目は、フェールセーフもしくはフールプルーフの視点で考えることです。
前者は、5M法やSHELL分析での「人(MAN)」「意識(MIND)」「方法(METHOD)」「使用設備・物品(MACHINE・MATERIAL)」ほかに「環境(ENVIROMENT)」等、そして後者はミスや事故は起こることを前提に、『起こっても大丈夫な仕組みや装置』『事故自体が起こりにくい仕組みや装置』を考えるフェールセーフ、フールプルーフを対策立案の対象とすることです。
特に、介護事故は介護サービスの特徴のところで述べました通り、365日24時間、生活の全ての場面を原因として、人と人が関わる状況の中で発生するることから“ヒューマンエラーがある、ヒューマンエラーはゼロにできない”という前提の対策が必要です。
思い込み、勘違い、うっかり忘れ、不注意等、程度の差はあっても人なら必ず起こすエラーをなくすことはできません。これは個人差で起こる面と、急ぎ、疲労、パニック、緊張など、状況の問題で起こる面とがあり、コントロールに難しさがあります。
“ひとはミスをするもの”という前提での事故防止・予防策がフェールセーフ、フールプルーフなのです。
「起こしてしまった結果を安全にする」「失敗しても大丈夫」「被害拡大防止処置」「ダメージをコントロールする」「おろかな操作から守る(誤操作自体をできないようにする)」「起こらないようにする」「出来ないようにしてしまう」「予防処置」と言われるものです。
具体的には、利用者が転びそうな場所、打ち付けそうな場所に緩衝材が使用されていたり、作業自体をしなくて済むようにしてしまったり、人間がする作業を機械がすることで、うっかりミスをなくすように危険自体をなくしてしまう方法など様々なものがありますが、実際に介護の現場で行われている安全策はフェールセーフ・フールプルーフを意識して考え出されたものではないにしてもいずれかに該当しています。これを今後、新たな対策を考えるときに意識すれば、良い立案ができます。
そうすることで、視点、時期、人によるバラツキのない具体的対策が生まれます。
以下は、5M法での対策例、フェールセーフ・フールプルーフの対策例です。
5M・SHELL対策例
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対策例 |
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人 MAN |
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意識 MIND |
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方法 METHOD |
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設備・物品 MACHINE・MATERIAL |
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環境 ENVIRONMENT |
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フェールセーフ、フールプルーフ対策例
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最後に
最後に、いま行なわれているものをもとにして“昨日までこれでよし”としていたものは“今日になれば当たり前”、“今日当たり前だったものは明日にはそれでは不十分、危険である”という考え方を持たなければなりません。ましてや、一時的に“あの頃に、こんなこともしていましたね”というような、進歩どころか一時的、場合によっては後戻りするような対策であってはなりません。この視点が大切です。